logl・ログル

世界をログしよう!

状況に応じた人道支援の基準:スフィア・ハンドブックが生かされる

Shoei/将英
2017.02.07

Humanitarian Standards in Context: Bringing the Sphere Handbook to Life(状況に応じた人道支援の基準:スフィア・ハンドブックが生かされる) 事例を通して,スフィア基準が人道支援活動の質と説明責任の向上にいかに貢献しているか紹介されています.

参照動画:https://www.youtube.com/watch?v=6p3WyekJ6aQ

スフィアプロジェクト

人道憲章と人道対応に関する最低基準 presents

災害現場での活動は常に困難です

現場に行って何をすれば良いのか理解することも非常に難しいのです

人道支援の基準

スフィア・ハンドブックを作成するにあたって

人道支援ですべきことと それをうまく進める方法を明らかにする挑戦が,スフィア・ハンドブックを制作した大きな動機でした.スフィアハンドブックは 分かりやすく,弾力的に人道対応を導き出してくれます.任意のツールと同様にスフィアハンドブックを活用するためには,使い方を学ばなければいけません.このビデオではさまざまな人道支援の場面での,スフィアハンドブックの効果的な使い方を紹介します.

スフィアは「人道憲章」で謳われている被災者の権利が基礎となっています.「最低基準」は人々の実際のニーズや求めていることに,これらの人権を当てはめています.「権利の保護の原則」と「コア基準」はプロジェクトのすべての過程に人々が参加する権利ベースのアプローチの実施に役立ちます.スフィアの最低基準は人道支援のどんな場面にも当てはまります.その一つひとつが独特で,多くの場合解決が難しいものです.

各基準がどれくらい満たされているかを測るために,「基本指標」が設定されています.しかし,指標を使う際は「基本行動」や「ガイダンスノート」を参照して,現場の状況に合わせて慎重に適用する必要があります.スフィアの指標と実際の現場の間にある隔たりを明らかにし,解釈を説明し,隔たりを解消した時に,スフィアに基づいて,ドナーと受益者の両方に対して責任を果たしたと言えます.

それでは,人道支援団体が様々な場面で,スフィアハンドブックを活用している実例を見てみましょう.

パキスタンの事例

シンデゥヒ

最初の例は,パキスタン南部のシンデゥヒ県です.ここはサタ地区にあるインダス川の三角州です.ここは洪水が発生する危険が高い地域です.2010年の8月に,コーテアルマオで川の堤防が決壊しました.この洪水により,国全体では2100万人が被害を受けて,1000万人が家屋を失いました.

Machi(マチ)の家族は洪水から避難できました.しかし,他の多くの家族同様,家畜を失いました.

マチ・ウリス(マタルマチ コミュニティーリーダー)

”私はほとんど全てを失いました.牛,家財道具.着ていた服と自分の子供だけが残りました.水田で育てていた作物も,全滅しました.全てが破壊され,何も残りませんでした.”

この地域の多くの家族にとって家畜は重要な生計手段で,一つ屋根の下で一緒に暮らしている光景も珍しくありません.今では,多くの加増が家畜を補充し始めています.

あるNGOは住民と相談しながら,彼らの生存に家畜が重要であることを配慮して衛生を促進しています.このNGOが使用している基準のひとつが「必須保健サービス―感染症対策基準1:感染症の予防」で,その「基本指標」は「その状況下で発生しうる主要な感染症の発生率が安定している(増加していない)」となっています.住民が家畜と密接な関係を持って生活しているので,特に洪水の時には,この目標を達成することは困難です.そこで,このNGOは,スフィア基準と家畜に関する基準(LEGS)に従って,家畜管理の研修を行っています.

アウグスティン・サバリヤー(NGO地域コーディネーター)

”住民たちには自分たちの暮らし方があります.文化的に受け入れ,長い間その生き方を守ってきました.住民たちは動物をできるだけ近くにおいておきたいので,動物が家屋の中にいることが多いのです.これが感染症が広がる原因の一つです.私たちのスタッフは地元のコミュニティに対して,何回もトレーニングを行い,意識を喚起し,普段の暮らしのスペースから動物を離すように伝えました.家畜の管理にもっと焦点を当てる必要があります.”

シラジ・クーロ(NGOプロジェクトマネージャー)

”人々に,どこでどのように家畜を育てればいいかを教えることで,私たちと子どもたち,コミュニティー全体を救うことができます.地域,文化,国を幅広く考慮していく必要があるのです.”

次は,NGOが地域の風習を尊重してプログラムを作った例です.

カイバル・パクトゥンクワ州

ここはパキスタン北部のカイバル・パクトゥンクワ州です.2005年の10月,大地震がこの地域を襲いました.

死者7万9000人

負傷者10万6000人

これは,特定の人々が支援から除外されるのを回避しようと,NGOが奮闘する事例です.

サバナ・コーサー(NGO地区プログラムコーディネーター)

”多くの家族が影響を受けました.そしてたくさんの女性が夫を亡くした.女性は見過ごされることが多かった.支援が来た時,ここが男性中心の社会だからです.特に寡婦は見過ごされました.彼女たちのための支援物資を他の人達が奪おうとしていました.”

ロクサナは2人の子どもと夫を地震で亡くしました.それからは義理の父親と一緒に暮らしています.

ロクサナ・ビビ(地震の生存者)

"男性と一緒の女性は支援物資をより早く受け取ることができました.男性と一緒ではない女性はシェルターを供給されませんでした.”

被災住民の生活を改善するには,何が必要で,それをどのように供給することが最善かを理解することが重要です.これには,状況を詳細に分析して,地域当局や被災者自身と粘り強く協議することが必要です.この地元NGOは「キャッシュ・フォー・ワーク」事業を企画する時に,この重要な基本指標の一つに,スフィア基準の「食糧の確保―生計手段基準2:収入と雇用」を適用しました.「雇用機会を提供する対応は男女平等に与えられる」があります.しかし,カイバル・バクトゥンクワ州では女性には働く権利がありません.

サバナ・コーサー(NGO地区プログラムコーディネーター)

”カイバル・バクトゥンクワ州には多くの民族が暮らし,独自の文化があります.”

ここでは,男性が完全な主導権を握っています.男性中心の社会なのです.意志決定の過程に女性は関与できません.

アハメド・マンソー

”私達が抱えていた問題はcash for work プログラムを通して得られる支援は男性に行っていました.女性は参加ができていませんでした.男女平等に働けるシステムを作り導入するのがチャレンジでした.”

サバナ・コーサー(NGO地区プログラムコーディネーター)

”地震発生の後,女性は初めて,家庭の外に出る機会を得たのです.私達の生計プロジェクトでは,女性に焦点をあてました.地域レベルでの小さなグループを作り,そこで説明会を開き,人権と女性の権利についての集会を行いました.男性を対象にして,教え方を教えてもらうための集会も行いました.”

女性が少しずつ経済活動に参加しはじめました.NGOからの小規模なローンによって,小さなお店を開いた女性たちもいました.これは2005年以前だったら不可能でした.

コンゴ民主共和国

コンゴ共和国

ここはコンゴ共和国,世界で最も貧しい国の一つです.多くの場合生産環境はスフィア基準を下回っています.政情が不安定な東部の北キヴ州で続いている紛争は,長期にわたって住民に影響を与え,避難民を生み出しています.

ドミニク・カギリマナ(避難民)

”私達が危険から逃れるために,このキャンプは設置されました.ルワンダ自由民主軍PARECOをはじめとするマイマイの民兵組織が,我々のお金を全て奪っていきました.彼らはレイプし,家を燃やし,人々を殺害しました.”

ターシス・ンザボミンバと家族(キルンバからの避難民)

”私たちは自分の家で夜を過ごすことができませんでした.逃げなければなりませんでした.それは戦争でした.彼らは畑を横切って追いかけてきました.家族皆が殺されていたかもしれませんでした.”

最も弱い立場にある人々を支援対象にする場合は,分かりやすく,先が見通せて,調整の取れた方法でなければいけません.スフィア基準は,調整と協力を上手く行うための,共通の言葉を提供してくれます.

エディー・ヤメンジョ(NGO緊急コーディネーター)

”人道支援を行うものとして,私たちの最初の関心事項は,誰を支援対象とするかです.一番必要としている人に支援が届かなければいけません.コミュニティーの中で一番弱い立場の人々を判別するようにします.私たちは,人道支援の現場において,客観的基準の設定を共に行います.この基準は,私たちの対応を統一させます.これらはスフィアの基準に基づいています.”

ここは北キヴ州の首都ゴマです.他の地域と同様に,ここの給水状態は不安定です.毎日キヴ湖のほとりへ行ってジェリー缶で水を汲みます.特に避難民にとっては,清潔な水は大変高価です.

「給水基準1:アクセスと給水量」を見てみましょう.この基準は,安全で十分な量の水へ公平にアクセスできることを求めています.権利,,,この場合は水に関する権利が明確に表現されています.「安全」「公平」「十分」という表現は,例えばこの場合であれば,量的な基本指標を使用しながら,特定の状況を考慮して解釈しなければなりません.飲料用,料理用,衛生面のために,平均で1人1日最低15リットルの水がいります.質的な指標と同様,量的な指標も状況に合わせる必要があるかもしれません.利用できる水がどれくらいあるかも考慮する必要があります.

ガイダンスノート2は,水の使用の優先順位をつける時に役立ちます.

ポニフェス・ディーポ(NGO緊急コーディネーター)

”WASHプログラムを計画するときは,男性,女性,男の子,女の子,社会のすべてのカテゴリーを巻き込みます.私たちはこう伝えます.この水は,飲水と料理のためのもので,女性と子どもたちが体を洗うための水です.彼らが最も弱い立場にいるのです.男性は川で体を洗えばいいのです.これはコンゴ民主共和国の農村に暮らす人々の習慣に,合っています.女性と子どもは家にいて,彼らは保護されています.”

ウガンダ

ここはウガンダの国境にあるブナガナです.あるNGOが学校で補助給食プログラムを実施している場所です.食糧の確保に注目してみましょう.「食糧の配給基準1:一般的な栄養要件」には,最初の指標として,「様々な食品に十分なアクセスがあり,あわせて栄養所要量を満たしている」が挙げられています.

ガイダンスノート2は,質的指標の「十分」という表現の解釈に役立ちます.1人1日2100キロカロリーの摂取を推奨していて,栄養必要量と自分自身で摂取できる栄養の差を補うよう提案しています.

”平時,人々は1日約1610キロカロリーを摂取している.非常時に,ほとんど食べるものがないことを想像してみましょう.人命を救うために,私達ができることをしています.農具や種も与えます.私たちはみんなに,配給する食糧の不足分を補うために,自分たちで食物を栽培するよう言います.私たちが”レンガレンガ”と呼んでいるものは野菜です.”

オズワルド・ムソニ(NGOマネージャー)

”3週間で育ちます.配給する食糧の不足分を補い,生活状況を向上させます.私たちはスフィア・ハンドブックを使いますが,本当に必要なことが,書いてないこともあります.そこで私たちは被災者と一緒に他の方法を探します.解決策は,人道支援団体からの提案からではなく,当事者からでてくることがあります.”

このNGOは子ども1人に対し1日600キロカロリーを提供しています.彼らはスフィアの関連基準であるINEEが提唱する.非常時の教育最低基準も使っています.

アウグスティン・カザディ(NGO食糧コーディネーター)

”親は薪を運びます.親が水を運びます.そして,親が子どものための食事を用意します.”

アニセット・カレマザ(NGOプログラムオフィサー)

”全てのパートナーが一緒になり,人々の尊厳を回復する力となる必要があります.世界食糧プログラムがあります.そして親たちとコミュニティーも,みんなの努力によるものだと感じています.私たちはギャップを把握し,さらなる資金を探し,支援をより効果的にしようと努めています.例えば,この前訪問した学校では,衛生面の心配があります.子どもたちが食事をする場所なので,子どもたちがきちんと手を洗っているかどうか確認する必要があります.そこでWASHプログラムに資金を出してくれるパートナーを見つけて,衛生基準に合わせることができています.今では,子どもたちは手洗いができて,衛生的な状態で食事をしています.”

コンゴ民主共和国の例で見た通り,最も弱い立場にある人の支援に加えてこうしたアプローチをとると,一部の人の最低基準が完全に満たされるだけでなく,多くの場合,被災人口全体に基本的な施設が提供されます.

ボリビア

スフィアを地域の状況にあったものにする上で重要なことの一つは,スフィアの基準と指標を国の防衛と災害マネジメントの仕組みの中で主流化し,そして人道セクターと政府との調整を改善することです.

次はボリビアの例です.1998年5月,過去50年で最大の地震がボリビアで発生し,100人の人命と,何千もの家屋が失われました.この地震を経て,政府は動きました.自然災害防災法を2000年に可決し,スペイン語でCOEと呼ばれる無数の緊急オペレーションセンターを,全土に設立しました.これにより,地方自治体,地区,国レベルの関係者が協働できます.関係者の調整は不可欠です.

フランクリン・コンドリ(防災・復興国内マネージャー,民間防衛省)

”スフィア基準は既に我々の憲法の中に制定されています.36の地方自治体が緊急オペレーションセンターを立ち上げました.これは,多くの地方自治法に支えられています.特にボリビアの人道支援コミュニティーは様々なネットワークで,国の緊急オペレーションセンターの活動をサポートしています.”

全国規模の緊急事態は2011年に起きました.数週間のうちにラニーニャ現象が何万人もの人々に影響を与えたのです.ラパスでは,土砂崩れによりクピニ地域の800の家屋が倒壊しました.アマゾン地域では,川野水が堤防を越えて,何百世帯も被害を受けました.

レオナルド・アギラー(洪水の生存者)

”私は以前は向こう側の川沿いに住んでいました.そこは私の場所でした.ある夜に嵐が来ました.水が家を流していく前に,どうにか自分の物を家から出すことができました.”

洪水がおこってすぐに緊急オペレーションセンターが始動したことで,多くの人命と生計が救われました.

マクダレナ・メドラーノ(環境部門秘書官,コチャバンバ県)

”スフィアは各部署の上層部に使われています.私たちは,これらの最低基準を履行し,調整をしながら動き,リソースをもっと効果的に使えるようにしています.多くの人道支援を行う者はこの基準に基づいて行動しています.スフィアは,このプロセスの中で,私たちを導いていく役割を持っています.”

ラパズ クピニ地区

ラパズで土砂崩れから数ヶ月が経過しました.国の災害準備プログラムは効果がありました.クピニは地域は危険度が高い4地域の一つに認定され,自治体がこの災害の直前に,危険な地域の家族のための家族のための避難所を建設していたのです.

シルバナ・ギリ

”この仮設住宅地は,スフィア基準に合致するよう計画されていたので,建物の大きさ,隣の建物との間隔,トイレ施設の数,衛生面と清掃,全てがスフィア基準を元にしています.私たちは人々の回復力にはたらきかけました.心理社会的,精神的な回復,自尊心,このような環境では,生活の質の向上が望まれます.国,省庁,地方自治体レベルで,どのように協働できるかを証明しました.この緊急時に,皆が効率的に対応し,基本的な人道支援の原則を守るよう行動しました.”

スフィアハンドブックを現地に見合った方法で活用するには,使用する全員がよく理解して正しく使うことが求められます.コチャバンバ大学で行われているようなスフィアの研修が,世界中で実施されていて,この最終目標に貢献しています.

カルロス・ロハス(産業科学学部長,コチャバンバ,デ・サン・シモン市長)

”スフィアを通して,地域と地方自治体当局の,専門家と技術スタッフを研修することができます.私たちは,学生や専門スタッフに,即時の対応能力を身に着けてほしいと考えます.ボリビア,そして世界中で重要となる,スフィアのアプローチと原則を広めることができるでしょう.”

過去15年以上にわたり,スフィアプロジェクトは,人道支援の現場や増加しつつある災害対応の現場で,人間の尊厳の尊重を促進してきました.今日,スフィアプロジェクトと他の関連事業は,一連の原則や基準の調整を通して,人道支援の質とアカウンタビリティを改善する大きな流れの一部となっています.これらの基準が人道支援活動のあらゆる側面に反映されるほど,困難な状況下で支援を必要としている人々の尊厳,権利,そして声を尊重しつつ,苦しみを緩和するという最終目標により近づけるのではないでしょうか.

Learn more

Get involved

Visit Sphere Project.org

http://www.sphereproject.org/

人気ログランキング

最新ログ

もっと見る
TOPへ戻る